Sunday, October 15, 2017

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用はパズルと積み木

社内転職でアメリカに行こうかなーと思って社内就職活動をはじめてから実際にアメリカに来て働き始めて、ずっと採用や人事評価で結構違いがあるよなーと思っていた。これがつまりジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の差というものなのかもしれない。

メンバーシップ型採用は、積み木。さまざまな大小似たような形の木のピースがあり、それをすべて使って何かを作らなければならない。持っているピースをできるだけ効率的にすべて使わなければいけないので、完成形のイメージは曖昧でおおざっぱ、「城」とか「工場」とか。いくつかのピースには特徴がある(三角形で一番上に乗せられなければならない、丸いので両側を細長いピースで挟まないと安定しない、など)ので、それらを支える形で汎用性の高い四角いピースをたくさん使って何かを完成させる。もしもピースが余ってしまっても簡単に捨てることはできないので、そのときは申し訳程度に横に並べてみたりするしかない。また、もしもピースが足りなくなったとき、新しく追加するにはお金がかかり、また追加したピースは簡単には捨てられないので、使い捨てピースで間に合わせるか、持ち合わせのピースで無理して細長く積み上げたりすることもある。上に置く用の三角形の特殊ピースばかり余ってしまうこともあるが、その場合もどこかに積まないといけないので、余った特殊ピースを乗せるためだけに追加で小さな城を横に作ったりする。
ピース側からすると、一回捨てられてしまうと別の積み木にいつ追加してもらえるかわからないので、できるだけ長く同じ場所で活用されるように汎用型の四角いピースを目指すことが安牌。

ジョブ型採用は、パズル。明確にどのような絵を描きたいかが決まっていて、そのためにできるだけピッタリとハマるピースを探す。どのピースもほとんどが特殊ピースなので、ぴったりはまるかはまらないかが明確で、すぐにピースが余ったり足りなくなったりする。それぞれのピースは捨てることも新しく追加することも比較的かんたんなので、描きたい絵が変わったり、描いてみてあまりうまくいかなくなったらいくつかのピースあるいは絵の一部を構成するピース群を捨てたり追加したりする。
あなたがどのような形のピースで、どのような場所にピッタリはまるのか明確な方が使われやすく、汎用性が高い特徴のない形のピースだと面白い絵が描けないのであまり役に立たない。

アメリカは明確にいわゆるジョブ型採用の社会なので、大学で勉強したこと、今までの経験をもとに入社して一日目から大活躍できるような人材が求められている。過去に同じような業界での同業種で活躍した経験があるとか、その業種を相手にするような仕事をしてきたのでどのようなことが要求されているかがよくわかるとか。企業側はできるだけ職種と求めている内容を明確にして、それにぴったり合致する人を採用することを目指す。

ジョブ型採用で一番好きなところは、それぞれの人がそのポジションで成果を発揮できるかどうかはその職種で要求されていることとその人のスキルの一致・不一致でしかないので、もしあきらかに業績の低い社員がいても、その人と職種が合ってなかったね、という話なのでその人自身の人格攻撃になることが少ない。
日本にいたころにたまに聞いた「あいつは仕事ができる」「あの人は優秀」みたいなぼんやりとしたハイスペック人間、みたいな評価があんまりないし、仕事できない=人間として価値が低い、みたいな考え方がない。コミュニケーション能力が高いとか、空気が読めるとか、そういうソフトスキルもそれが要求されている仕事であればそのような資質が高い人が評価されるけど、すべての仕事にそれが要求されているわけではない。

また、パズル型モデルでは企業が描きたい絵を明確にしていないとはじまらないので、企業理念や短期・長期の目標がより具体的で明確。求職者、社員はより具体的に、企業が目指していることと、自分がそれにたいしてどのように貢献することを求められているかがより明確なのでやりがいもある。万が一クビになってもそれは自分の人間としての能力が低いわけではなく、たまたま企業の求める資質と自分の能力がマッチしなかっただけ。

個人的にはアメリカのジョブ型採用のほうがわかりやすくて好きだが、その分自分で自分の長期的なキャリアを意識的に考えて自分の「特殊技能」を伸ばしていかないといけないので疲れる部分もある。

それから、同じ企業内でも日本法人の人はメンバーシップ型雇用のメンタリティがあるので、相手の職種や責任範囲に関係なく、ちょっとこれできるんだからやってよ、みたいな仕事の頼み方をして「これは俺がやることじゃねぇだろ。なんで頼んでくるんだよ」といった微妙な議論を産んでしまうことがたまにあって見ていてつらくなる。というか日本で働いていた頃は自分も同じようなことしてたかもなー。

まあでもやはりアメリカの採用システムのほうが好きか嫌いかで言えば好きだ。この採用システムの中でこれからずっと活躍していけるかどうかはまだわからないけど。









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